皮膚の腫瘍(できもの)
- 単純黒子(ほくろ)
- 皮膚の腫瘍
- 疣贅・皮膚繊維種(いぼ)
- 粉瘤(おでき)
- 脂肪種
- アクロコロドン(スキンタッグ)
- 脂漏性角化症(老人性シミ)
など
キズが治る過程ではいろいろな細胞が現れて適切な働きをし、傷口をふさいでいきます。その際、それぞれの細胞がメッセージを出し合って修復作業を行っていきますが、細胞間作用の橋渡しをする物質がサイトカインや増殖因子です。これらの物質は多数あり、繊維芽細胞や表皮細胞を活性化するなどして、〝皮膚の再生力〞を挙げて、キズを治していきます。
多くの場合は、赤み、色素沈着(クスミ)、色素脱失が問題になります。これらはいずれも、上図の「炎症期」における整理物質が原因です。
図1:赤みのある瘢痕
赤みは拡張した毛細血管が原因で、通常は3~6カ月で消退します(図1)。炎症反応が強い場合や、幼児など低年齢の場合は長期間続く場合があります。
図2:色素沈着を伴う瘢痕
色素沈着は炎症物質がメラノサイトに働くことによってメラニン合成の増加が原因と考えられています(図2)。この反応は紫外線によって悪化する場合があります。
色素脱失はメラノサイトの破壊が原因と考えられており、色素沈着よりも強い炎症で生じます(図3)。時には、外傷性色素沈着と色素脱失が同時に生じる場合もあります。
図3:色素脱失を伴う瘢痕
図4:キズの幅が広い瘢痕
キズにかかる緊張の強さがキズの幅を広げて目立ちやすくさせます(図4)。その為、瘢痕(キズ痕)が目立つ部位があります。例えば、胸部、肩、四肢などです。どんなに綺麗に縫合されたキズでも、Ⅰ型コラーゲンの増生と共に次第に強固になりますが、正常組織の強度に回復することはないです。
その為、治療の際は、創縁の緊張をできる限り少なくして、瘢痕(キズ痕)の幅を最小限にするための工夫が必要です。例えば、真皮に埋没縫合を置いて、約3ヵ月程度の減張効果を期待したり、継続的にテープ固定などを行うことが重要です。
キズの炎症や緊張が強い場合、キズは盛り上がって治りやすいです(図5)。また、安静が得られにくい部位、Relaxed Skin Tension Line(RSTL)と直行するキズも平らに治りにくいです。また、患者の体質なども大きな影響を及ぼし、臨床的に肥厚性瘢痕やケロイドという病態の原因になります。
陥凹瘢痕は水疱瘡やニキビの治癒後に起こることが多いですが、これは瘢痕の拘縮が垂直方向に起こった結果と考えられています(図6)。
図7:拘縮した瘢痕(trap-door変形)
瘢痕(キズ痕)は必ず拘縮を起こし、キズ痕が目立つ原因になります。半円形の皮弁状にめくれたキズに好発するtrap-door変形は代表例です(図7)。また、キズの周りのリンパ液や血流の流れが悪くなることも、キズを目立ちやすくさせる原因です。その他、まぶたや唇の辺縁にキズが存在すると、容易に拘縮を起こす為、変形が目立ちやすいです。
また、関節周囲に拘縮が生じると、関節の運動が制限される“瘢痕拘縮”と呼ばれる状態となり、原則、手術が必要となります(図8)。
図8:熱傷後の瘢痕で拘縮した指
瘢痕(キズ痕)治療方法には大きく保存的な治療と、外科的な治療の2つに分けられます。
症状や時期、患者の希望により、最適な選択していきます。
トラニラストや柴苓湯などが症状の軽減に効果があります。ケロイド体質の患者様の術後に、予防的に内服して頂くこともあります。
副腎皮質ホルモン剤の軟膏(アンテベートなど)やテープ(ドレニゾンテープやエクラープラスターなど)、または、非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)で炎症を抑えたり、白色ワセリン、ヘパリン類似物質(ヒルドイド)などを用いて湿潤環境を保つことで改善する場合もあります。
副腎皮質ホルモン剤の注射薬(ケナコルト)を用います。皮下注射が必要となるため、疼痛を伴いますが、内服薬や外用薬に比べて、効果があります。また、妊娠適齢期の女性や活動性のニキビを有する患者では、生理不順やニキビの悪化につながる場合があるので、治療は慎重に行います。
瘢痕(キズ痕)は、圧迫・安静・固定を行うことで改善することが多いです。サージカルテープやシリコンテープなどが用いられます。予防目的だけでなく、すでに存在する瘢痕に対しては、適度な圧迫・安静・固定を行うことで、肥厚した体積の減少や、掻痒感などの自覚症状の改善が期待されます。
Nd:YAGレーザーなどの血管作動性レーザー(血管の数を減らすレーザー)が有効です。特に線状の肥厚性瘢痕や薄く広い面積を持つ症状には効果的なことがあります。患者によってはレーザーのみで美容的な目標を達せられる場合がありますが、現在では健康保険の適応はありません(自由診療になります)。
ケロイドの術後には放射線治療を行うことがあります。放射線は、手術後のキズが肥厚性瘢痕やケロイドになることを予防する効果があります。この治療は、総合病院で放射線科医と相談しながら行うので、一般のクリニックでは行えません。また、副作用として将来的にわずかながらその部位の発がんのリスクが増えます。ただし、最近のケロイド治療における放射線治療では、線量や照射方法が改善されていますので、発がんのリスクは最小限に抑えることができています。
メイクアップ治療、カモフラージュ治療、リハビリメイクなどが用いられます。他の治療を希望しない患者には良い適応であり、患者の精神面も改善することがあります。
サイズが小さい場合は、瘢痕(キズ痕)を全切除します(図9)。肥厚性瘢痕で線状の拘縮がある場合は、Z形成術を行う場合もあります。ケロイドの場合は、術後、電子線照射を加える場合があります。
図9:単純切除および縫縮
縫縮できない大きさのケロイド、または術後電子線照射を予定していないケロイドの場合は、ケロイド内切除(くりぬき法)を行います(図10)。
10:ケロイド内切除(くりぬき法)
11:瘢痕拘縮に対する植皮術
大きすぎて縫縮できない肥厚性瘢痕に対しては、切除と植皮(図11)または皮弁手術(図12)による再建術を検討します。ほとんどの場合は全身麻酔で行うため、総合病院で治療することになります。
12:瘢痕拘縮に対する皮弁術
形成外科専門医とスタッフが丁寧に対応いたします。傷跡について、ご不明な点や聞いておきたいことなどがございましたら、お気軽にお申し付けください。
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